朝起きると、外はかなりの雨風だった。
犬達と散歩していても、出勤しても、気が気でない。
夕方になり、動物病院に間に合うよう、終業時間より15分早く病院を出た。
帰りながら、不安が募る。
思っていたより、雨量が多い。川の水位の上がり方が予想以上なのだ。

帰宅すると、母が犬の散歩を済ませてくれていた。
おいしい乾燥オヤツをたくさん持って、すぐにポンプ小屋に向かった。
雨はますます激しい。
そんな。
ひどくなるのは明日が本番じゃなかったのか。
おむすび(仮)の隠れ家が一体どこなのかは知らない。
でも、いつもは長靴で降りられるポンプ小屋わきの川は濁流になり、川を渡る我が家への道路も部分的に冠水している。

横なぐりの雨の中、1時間待った。
とっくに真っ暗になっており、動物病院も閉まったが、もうそれはどうでもよかった。
何度も呼んでみたり、下手に呼んでそれにつられて無理をして川に流されてはいけないと思ったり、いやそこまで絆ができてはいないよなと考え直してまた呼んだりした。
山の方へ少し捜しに行ってみたりもした。
センサーライトがついたので喜んだら、自分に反応しただけだったりした。
以前にも、雨の晩には会えなくて、翌朝も餌が手つかずだったことがあったし、わざわざこの土砂降りの中を餌場まで来はしないだろうとは思ったが、時間が過ぎ、雨が激しくなるほど、悪いことばかり浮かんでくる。

母からメールで促され、器に餌だけ補充していったん家に戻り、濡れた服を着替えた。
昨日保護すべきだった。
ひどく後悔した。
私はタイミングを逃したのだ。

話は23日に戻るが、昨夜、あまりに雨足が強まったとき、心配でたまらなくなって
「やっぱり今夜のうちに保護してこようかな」
と母に言った。
母は
「さっき食べに来たとき、全然濡れてなかったんでしょう。
ということは、ちゃんと良い隠れ場所を持ってるのよ。
これで流されるなら、野良猫は全滅するわ」
と答えた。
それもそうか、と保護を断念したのだが、一日経った今日、母自身はそう言ったことを忘れており(どうも居眠り中で、夢うつつだったらしい)、何故昨日のうちに保護しなかったのかと私に問うた。
結局、私は自分で考えて判断を下さず、「心配だから今夜保護したい、でも明日は外来担当で獣医さんに行けないから明後日になる、その間に部屋にノミでもとんだら後が大変・・・」というモヤモヤに、母の言葉を利用して適当に決着をつけてしまったのだ。

重苦しい気分で犬達の食餌を作った。
夕食をどうするか母に訊かれたが、食べる気がしない。
一昨日、まとわりついて離れなかったのは、その時を逃せばもうチャンスはないというおむすび(仮)のメッセージだったのかも、とまで思った。

犬達がお腹を満たしてゆったりとくつろぎ、フードボウルを洗い終えたら7時になっていた。
無駄と知りつつ、もう一度様子を見に行こうとした。
私が犬の食事を作っている最中に様子を見に行った母が言う。
「15分くらい前に行ったけど、来てなかった。
こんな悪天候の中来るようでは、野性では生きていけないよ。
絶対今夜は来やしないって」
確かにその通りなのだが、見に行かないと自分が耐えられないし、後々、
「もしかしたらあの時来ていたかもしれないのに」
という後悔を拭えないだろう。
それに、同じ轍は踏まない。
自分の頭で考えて決めるのだ。
母の声を背中に聞きながら外へ出た。
出てみて初めて気づいたが、意外なことに雨も風も、ほとんどおさまっていた。
台風が近づきつつあるというのに、どうしたことか。
これならばもしやと思いつつ足を速めた。
ポンプ小屋までまだ15m程もある辺りで、おむすび(仮)を呼んでみる。
あの、少しかすれた鳴き声がゲートのところからした。
「ニャー・・・」
おむすび、おむすび、と連呼しながら小走りにポンプ小屋へ近づく。
呼ぶ声がかすれる。
おむすび(仮)はそれに応えて、ニャーニャーと繰り返し鳴く。
夢中で小屋まで行き着くと、おむすび(仮)がいつものように足もとにすり寄ってきた。
これが犬なら、ガッシと抱きしめるところだが、それをぐっとこらえ、いつも通りの声(のつもり)で話しかける。
「おむすび(仮)、無事だったの。心配したよ」
今度はもう、チャンスを逃さない。絶対に。
一刻も早く連れ帰りたい。
クレートに入れるべき乾燥オヤツを忘れてきたので、普通の餌を入れて誘った。
外にも同じ餌が置いてあるのに、おむすび(仮)はクレートに入ってくれた。
数日前、試しにクレートからはみ出たシッポを中へ押し込み、お尻をぐいぐいと押さえつけてみたことがある。
保護時にフタを閉める際の予行演習だ。
おむすび(仮)はまったく気にしていなかった。
あれと同じようにすればいいだけだ、慌てるな、慌てるな、と自分に言い聞かせながら、長いシッポをクレートに収める。
餌を食べ終えてこちらを向こうとしたタイミングで、かちりとフタを閉めることができた。
さあ、一緒にお家へ帰ろう、と言ってゆっくり持ち上げ、歩き始めた。
胸がドキドキした。

移動中、少しは暴れるかと思ったが、時々ニャーと鳴くだけで予想外におとなしい。
まさかの保護成功に、母も驚き、
「今度は、あんたの判断で動いて正解だったね」
と喜んだ。
昨日から用意していたケージにクレートごと入れ、フタを開けた。
さすがに、目をまん丸に見開き、緊張でイカ耳になっている。
部屋の電気を消し、いったん部屋から出た。
5分くらいして行ってみると、もうクレートから出て、敷物の上に座っている。

気がつくと自分のお腹がペコペコになっていたので夕食を食べ、また激しくなった風雨の中、元気いっぱいでDVDを返却しにTSUTAYAまで行き、帰りにコンビニでアイスを4つも買った。

帰宅しておむすび(仮)の部屋をのぞく。
まだ固まっているかなと思ったのだが、入れておいた段ボール箱の上に上がって座っており、私を見ると降りてきてニャーと鳴いた。

保護して2時間。
おむすび(仮)は完全にリラックスして、室内暮らしの猫生を歩み始めた。
「おむすび(仮)」が「おむすび」になった。
10 件のコメント:
良かったー!
おむすび、良かったー!
実は、うちに居たチビニャンコのことで、じわじわとハニフラ家に
プレッシャー?をかけつつも、あっさり他のうちの子になったため、
ちょっと肩すかしというか ガッカリさせてしまい、本当ならば
味わう必要の無かった寂しさや喪失感まで 無意味に味あわせて
しまったのではないかと、気に病んでいたのです。
でも、それもこれも おむすびとのご縁がすでに結ばれていたから
なのかもしれませんね!
(と、自分に都合よく解釈させてもらっちゃいました)
これからのおむすび、ますます気になります♪
ヤッター!\(^_^)/ヤッター!\(^_^)/ヤッター!\(^_^)/!!
とりあえず一安心(o^-^o)
ハニフラさん、ありがと♥♥♥
良かった~!
動画見て涙出ましたよぉ、おむすびちゃん、すっかり懐いてるじゃないですか!
室内に入ってすぐあれだけ落ち着けるのは、
もしかしたら誰かに飼われてた経験があるのではないでしょうか?
生粋の野良ちゃんは、そもそも2週間ほどで懐いたりしないと思うんですよね。
捨てられて、でもハニフラさんのとこにたどり着いたのだとしたら
おむすびちゃんはかなり賢いと思う!!
まずはほっとしました。
これからは焦らずゆっくりみんなと馴染んでいけばいいですね。
でもなんかすぐ仲良くなれそうな気が^^
ハニフラさんもお母様もお疲れ様でした^^
おむすびちゃん、無事に保護できて良かったですね!
あの環境の中、ハニフラ農場に辿り着くとはなかなかの強運の持ち主♪
こんなに落ちつている子なら、おこげちゃんおもちちゃんとも大丈夫そうな気がしますね。
にしても、ふっふっふ〜。着実に猫濃度が増していってますね(^m^)
ハニフラさん家の子になるって決めていたのかな、おむすび。
だから抵抗もなくクレートでおとなしくしていたのかな。
あの風雨の中よくハニフラさんを信じて来ていたものですね。
すごい運命だわ。
無事に保護できてよかったですね(^^)
まりこさん、ありがとう。
えっ、チビニャンコのことで?
そんなまさか、とんでもない。あれだけ可愛いから、きっと良いお家が見つかるorまりこさんちが陥落する、のどちらかだろうと思って、自分に予防線を張っておりましたので、ノープロブレム!
その後のチビニャンコの幸せそうな様子に、ほっこり幸せにさせてもらったくらいです。
おむすび、本当に人懐こくて可愛いのです。
もうメロメロ・・・(笑)
ベックマンさん、この日は本当に地獄から天国って感じでした。
おむすびの独特のかすれ声が聞こえたとき、できるならバク転バク宙したでしょう。
それにしても、ベックマンさんてば相変わらずの顔文字上級者^^
ゆずゆきんさん、私も動画撮りながら泣きそうになりました。
捕らわれて怯えるどころか、心底安心したように甘えてくるんですもん、これまでどれだけ寂しかったかと。
おお、さすがゆずゆきんさん、やはり飼い猫経験ありそうに思われました?
私も時間が経てば経つほど、そう思えてきます。
捨てられたのか、外飼い猫が道に迷ったのか分からないですが生粋の野良にしては、怯えなさすぎですよね。
性格がいいのですぐ馴染めそうなんですが、まずいくつかハードルが。
また週末にも書けると思います。
ちりはことさーん、猫濃度が上がってます、どうしよ〜^^;
猫の保護なんて初めてなんで、うまくいきっこないと最初は思ったんですが、おむすびがあまりにおおらかで人懐こいお陰で、叶いました。
逃げなくなってからは、毎晩の餌やりタイムが楽しみで♪
甘味チームも早く素敵なお家が見つかると良いですね。
皆どんどん可愛くなってるし。
ぴっぴさん、そうなんです、あの晩、雨風がやんだとはいえ一時的に過ぎず、悪天候きわまりないのに、よく合間を縫って小屋まで来てくれたと思います。
実に甘えん坊で人懐こい子なので、人恋しくて仕方なかったのでしょう。
今朝も、「よくあの時うちまで来てくれたね」と話しかけてから仕事に来ました(笑)
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