12/16/2014

初たまご!






7月末に、いちえん農場さんから迎えた6羽のひな鳥たちはすくすく育ち、今ではわりと迫力のある元気な鶏に成長した。


なかなかに広いうちの敷地を、縦横無尽に歩き回っている。
例えば9月のある日、姿が見えないなと思ったら
いつの間にパークの方まで!?
小川の中をじゃばじゃば歩き回っている
そこらへんはクレソンが茂ってたんだけど・・・
おとうさまは水浴びした様子

でも、夕方にはちゃんと小屋に戻っているし、人を見つけると駆け寄ってきて、ついて歩く。

ある時などふと振り返ると、犬7頭、鶏6羽という不思議な群れが、私の後ろをぞろぞろとついて回っていた。
(自分では写真や動画を撮れないのが残念)





名前を紹介しまーす、とか言いながらそのままになっていたので、今さらながら紹介しまーす。
分からないよね。
うん、私も画像加工しながら思った。

これはまだ2ヶ月ほど前の写真なので多少見分けがつくが、今ではちびも他の鶏たちと遜色ないほど大きくなったし、よーく見ないと分からない。
足輪を買おうかな、と思っている。
そしてここがお気に入り
しょっちゅう磨いたり手入れしてるのに

愚弟の大事な自転車が大人気で、押し合いへし合いで留まり、落ちそうになってガシガシ掴み直したりしている。
 「傷がつく・・・」
と、泣きそうになっていた。

で、愚弟、留まられても大丈夫なようにテープを巻いていた。
 「これで傷もつかないし、鶏達も滑らなくて留まりやすそう!」
と得意げであった。
場所移動はしないらしい、鶏達が気に入ってるから





11月28日に、いちえんさんちの同級生鶏たちが卵を産み始めたとメッセージをもらった。

我が家の6羽といえば、まったくそんな素振りはないし、そもそもおとうさまからしてまだまともにときの声を上げられないんで、最初に聞いていた12月半ば頃からになるだろうとゆったり構えていた。



12月に入ったばかりのある朝、「えあーっ!」という変な悲鳴が聞こえた。
てっきり犬が誰か苦しんでるのかと驚いたが、犬も猫も全員が、部屋の中でなにごともなく落ち着いている。
ふと外を見ると、おとうさまが一生懸命ときの声の練習をしているのだった。

笑っていたら、たゆまぬ努力で数日のうちにみるみる上達し、得意げに高いところで鳴くようになった。



ここに至って、我が家もいよいよ塞いでいた産卵箱を開き、もみ殻を敷いて準備万端整えた。
毎朝産卵箱を確認するのが日課になった。





そして先週金曜日(12日)の朝。
可愛らしく2個、茶色の卵がころんと産み落とされていたのだ。

前々日は確かに卵はなく、前日は当直明けで家にいなかったので確認できなかった。
母は、まったく卵を気にかけていなかったらしく、産卵箱は見ていなかったという。

だから、木曜日に産んでいたのか、金曜日に2個産んだのかは分からないが、とにかくぴよちゃんたちは産み始めたのだ!

もう、この胸のときめきをなんと言えばよいか。
写真なんぞ頭に浮かばなくて、撮らなかったさ。
後からあわてて記念撮影したのだ


母に見せて喜び合って、出勤したら、昼前に『もうひとつ産んでいる』と母から写メールが来た。
雌鳥は5羽だから、あと二羽か。

翌土曜日は、こまめにのぞきに行ったおかげで、いろんなことを知った。

 1.産卵箱に入ってから産むまで、わりと時間がかかる。
    産卵箱に入ったら間もなく産むのだと漠然と思っていた。
    しばらく座っていたのにまた外に出たりするんだ。

 2.他の雌鳥や、おとうさまが、周りで応援している。
    ほぼ毎回、おとうさまはそばについて見守っている。
    ちょくちょく、他の雌鳥も見守っている。

 3.産んでも、騒がない。
    母から、鶏は産んだらけたたましく鳴くと聞いていた。
    うちのぴよ達は、静かに産んで、静かに出てくる。
    軽く会釈して「拙者、産み申した」と侍の佇まいである。

これから慣れると変わるのかも知れないが、今のところ、想像していたのとはけっこう違ってなかなか面白い。
おとうさま、また応援中

土曜日に産み落とされたふたつの初卵は、温かいうちに大事に梱包して大阪の愚弟に送った。
なんといっても、一番鶏たちと相思相愛だったのが愚弟なのだ。





さて卵をどう頂くかだが、貴重な初卵なので、なるべく卵本来の味を味わいたい。

母は、あいにく虫歯が痛んで顔が腫れていたので、お粥に溶き入れて元気の素に。
私は炊きたてご飯にかけて卵ご飯で。

殻が硬く、色味も濃い。
あの子達の生命から分けて頂いていると思うとしみじみとありがたく、目頭が熱くなる。
ママンは際だって大きく、立派

ほかほか湯気を立てる卵ご飯に向かって、また空になった茶碗に向かって、心の底から何度も手を合わせて頭を下げた。



日曜日には、またふたつ産んでいたので、今度は生で飲んだ。
生で飲むと分かるが、白身も黄身も「かたい」という表現が出そうなほどの弾力だった。
力強い卵の香りが広がり、口中にしばらく濃厚な後味がとどまって、最高だった。





夜になって、小包を受け取った愚弟から、開封状況が逐次写真付きで送られてきた。
そのやりとりの一部抜粋。彼の喜び具合が伝わるかしら。
どうやって頂こうか悩んだ挙げ句、愚弟もまずひとつは生で飲み、翌朝ふたつめを卵ご飯にしたそうだ。





いちえんさんが、冬至を過ぎる頃には、産卵率ほぼ100%になりますよと言っていた。
ひ、100%!?

それは、驚くやら嬉しいやらだが、無理しなくていいからね、ぴよちゃんたち。
生協でいちえんさんちの卵は定期購入しているし、しんどくないペースで産んでくれたら十分だから。

・・・と、ぴよ達に言い聞かせてから出勤したのだが、さっき母から写メール。
みっつかーい!

あんまり頑張らなくていいよって言ったのに。ふふ。

11/30/2014

野性との交わり

今朝早く、鉄砲の音が鳴り響いた。

家の近くだったが、3発ほどで終わった。
犬達と敷地内を歩いていた私は、思わず曇った空をあおいだ。
ぶっぶは大丈夫だろうか・・・





我が家の周囲も最近の里山の御多分に洩れず、イノシシが多く、ほぼ毎日銃声が響き渡っている。

これまでも、その音を聞く度にかすかに胸が痛んだが、やむを得ないことと気にとめないようにしてきた。
農家の人にすれば、イノシシによる害は死活問題なのだし。





でも今年、我が家には変な出会いがあった。

さかのぼれば、この春ごろから、うちの敷地がイノシシに掘り起こされ始めていた。
一見おそろしげな犬たちのおかげかこれまでは無事だったのだが。
実はちょろいとバレたか

放棄田を埋め立てて赤土がそのままだった地面も、移住後数年経ってようやく下草に覆われ、繊細な地衣植物も広がった。
季節ごとに小さな花が咲いたり実をつけたりするのも愛おしく、なるべく踏まないように気遣っていたのだが、そういった場所も掘り返されてどろどろになってしまった。

植物がダメになってしまうのはショックだが、もともとは彼らの地。
それと、周囲の山では銃のみならずワナもけっこう仕掛けられており、イノシシたちはだんだん安全なうちの敷地に足を踏み入れつつあるのだろうかと思ったりしていた。

夏頃からは、ウバメの段にイノシシが住み着いたらしく、毎朝新たに掘り起こされており、私の背より高く茂った雑草の中に、大きな寝床もあった。
(寝床の写真も撮ったはずなのに見つからない)
『ヤラレタ!』『アカンヤン!』

さすがに犬が5頭(+チワワ2匹)いても急に出くわすのは危険だし、どのみち夏はマムシが怖いので、早朝にさっと見回るくらいで、実際にイノシシと遭遇したことは一度もなかったのである。



ところが、10月26日の朝、出勤時。
家の前の田んぼに、小さなイノシシがいるのを見た。
少し行きすぎたので車をバックさせると、我が家の方に向かってぴょいぴょい逃げて行ってしまった。

実は、私は生きたイノシシに出会ったのは初めてだった(骨は何度もあるし、あと身付きも一度あるが・・・)。
かろうじて動画に撮れたので、帰宅後、興奮気味に母に見せたものだ。


きっと、ウバメの段のイノシシの子だろう、少し大きくなって、一人で冒険に出てみたのかな、などと話した。



だがどうも、そうではなかったようだ。
数日後の11月2日、その子イノシシは、ひょっこりうちの庭に現れた。
犬も人も、あまり恐れていないようだった。

その日、お昼前に庭仕事をしようと犬達と外へ出るやいなや、ブラウニーが何かを追いかけたのだ。
ほんの2mほどの距離だったので、まさか今さら鶏を追いかけたのかと振り向いた私にも、小走りに駆けていく子イノシシのお尻が十分に確認できた。

なんと、家の周りまで上がってきたのか!犬の匂いもすごいだろうに。
またまた興奮して母に報告した私だったが、その時はまさかまた子イノシシが戻ってくるとは思っていなかった。

だが、子イノシシは戻ってきた。それもほんの2、3分後に。
そして以後、黒犬達にも何度も追いかけられ、お尻を囓られんばかりに追い詰められ追い払われても、何度でもその子は戻ってきた。
マタ来タヨー
ウ:タダチニ追イ払イマシタ

だいたい毎日、庭のあちこちに現れて掘り返し、いつの間にか鶏やチワワと馴染んでしまった。

一週間後には、チワワとお尻を突っつきあって遊んでいるところを母が目撃している。
その直後に、気づいて猛然と駆けつけた黒犬4頭とブ坊に、敷地のはるか向こうまで追いまくられたらしいが。



近くで見ると、本当に小さい。
加えて、いろいろな危険を全然分かっていないところから推測してみる。
ひとしきり掘ると、穴の中でころんと転がって休んじゃう

ウバメの段で生まれ育ったのは間違いない。
きっと、近くの山に出かけていて、親と兄弟は罠か猟で殺されたのだろう(10月26日の少し前くらいに)。
一匹だけ助かって、生まれ育った場所に逃げ帰ってきたのではないだろうか。
お昼寝中

こんな小さい子を一匹だけ逃さず、捕るならちゃんと全部捕ってやってよ。
残されればかえってむごいじゃないか。



母と私は、イノちゃんとかブイちゃんとか適当に呼んでいたが、そのうちなんとなく「ぶっぶちゃん」と呼ぶようになっていった。

1週間ほど通い詰めた後、ぶっぶちゃんは毎日は現れなくなった。
3、4日毎に庭にやってきて、他の日は、ウバメの段や、ゲートの外回りや、前の田んぼ(今は何も植わっていない)を順に回っているようだ。
同じところを毎日掘り返しても、食べ物は得られないと学習したようだ。


ぶっぶちゃんは最初から私達人間を怖がらなかった。
追いかけられるまでは、犬も怖くなかったようだ。
だから最初からけっこう間近で観察できたのだが、掘っているわりにほとんど食べ物にありついていない。
ごくたまにもぐもぐしているばかりで、ただただ掘っている。
初めはウバメガシのどんぐりがたくさんあったので、それらをボリボリと食べていたが、もうない。
試しに、サツマイモを埋めておいてみたが、掘り当てているのに食べようとしない。
母が、蒸かしイモを放り投げてやったら、背中にコツンと当たって、嗅いだが食べなかった。
何でも食べるというネットや本の情報と、ずいぶん違うなあ。



とにかく、我が家に通い続けられると困る。
今は小さくて可愛いが、100kgにもなるらしい。
すでに2年前に私が汗水流して張った芝生も掘り返され、バラの苗が2本、ミカンの木が1本消えてなくなった。
頼むから、山に帰っておくれ。

だが願いもむなしく、どんなに犬達に追いかけられても、ぶっぶはやってくる。
そうこうしているうちに、すっかり情が移ってしまった。
実は母の足もとで寝ていたのでした
警戒心なさ過ぎでしょ・・・

たぶん、この近くで大きくなれば、早晩ワナか銃で命を落とすことになろう。
可哀想だが、現状では仕方がない。
仕方がないと分かってはいるが・・・
鶏もお昼寝を見守る
いっぽうこちらは狙うふたり

昨日も、我が家でしこたま掘り返しまくった後、前の田んぼで一生懸命に何か掘っていた。

ちょうど母と車で出かけるときに見かけ、
 「あんなとこにいたらやがて殺されてしまうよ」
と心配したのだった。





今朝の銃声は、どうだったのだろう。

またぶっぶに会えるのだろうか、それとも昨日のお昼に見た小さな背中が、最後になるのだろうか。

話し声が入っています、ご注意