4/21/2009

庭師出撃






我が家の玄関先に、小さな植栽スペースがあります。


穴掘り職人、ソフィの働きにより、正面玄関にも関わらず、ここしばらく、こんなことになっておりました。


これまで、直しては掘られ、直しては掘られ、いたちごっこを繰り返した挙げ句、我らの直す気力が尽きてしまい、数週間というもの、このまま放置されていたのだ。

しょっちゅう直すから、しょっちゅうレイアウトが変わる。これは2年前。


でも、いつまでも荒れ果てたままというわけにはいきません。
先日、遂にガーデンデザイナーが重い腰を上げました。
タダ働きのガーデンデザイナー、私です。

以下、作業手順です。




まず、玉竜、黒竜、ギボウシを注文。

            玉竜
            黒竜




植物が届くまでに、ボサボサに伸び放題だったオリヅルランを、全部撤去。(別の場所に移植)

ハンギングバスケットの中では和風で涼やかなオリヅルランが、地植えにするとこんなにも巨大化するとは予想外だった。根っこなど、大根のように肥大している。厚かましいことこの上ない。

オリヅルランは、空中で楽しむべし。

生後3ヶ月頃のホープと、爆発的に茂り始める直前のオリヅルラン。お尻の横に、覆輪沈丁花が見えています。




次に土壌改良。
ここは、地下に配管があり、あまり水はけが良くない。おまけに北向きである。さらに、一部は時々、犬のおしっこ攻撃を受ける。


そこで、パーライトを大量に混ぜ込んだ。さらに、土壌改良材・有機肥料はもちろん、ニーム顆粒も加えた。




ここで、岩をたわしでゴシゴシこする。
こびりついた土は、水で流したって落ちやしないのだ。
すると、岩や敷石の色が変わる。
というか本来の色に戻る。




頭の中で思い描いたイメージに合わせて、植物を植え、砂利を敷く。
砂利は、庭の各所で、穴掘りクラブの活動により土に埋もれていたものを、フルイにかけ、水洗いし、利用。

文字通り、土に埋もれてる。

洗いの途中。だいぶきれいになった。

土の上にそのまま敷くと、徐々に埋もれてしまうので、鉢底ネットを置き、その上に砂利を載せるようにすると、砂利の量も少なくてすむし、いつまでも土と混ざらずきれいである。たぶん。(自己流)

このとき、ネットの下に銅板のかけらを仕込む。どうか、ナメクジが減りますように。なーむー。




もともとあった植物のうち、沈丁花は悪条件のためにコセてしまったのが怪我の功名、逆に面白い樹形になっているので、そのままにして、根元に苔を移植。

苔は、朴の木の鉢からひっぺがした。

ガーデンシクラメン、シランも生き残っていたので少し場所を移動して再利用。

ヒメツルソバは、息も絶え絶えだったのと、元気を盛り返すと逆にはびこりすぎるので、撤去。

実生で勝手に生えてきたヤツデを、少し横に移動して良い位置に移植し、利用。

ヤツデと、在りし日のヒメツルソバが見えるでしょうか。

届いた玉竜、黒竜、ギボウシも植え込む。

ギボウシは覆輪のものが多いし、個人的にはファイヤーアンドアイスが好きなのだけど、沈丁花が覆輪なので、覆輪だらけでは雑然としてしまうから黄金葉のゾウンズにした。

芽だし時分からとてもきれいです。




完成!


深山から川(玉竜)が流れ出し、下流に至る情景を描いたつもりです。
玉竜は、これから広がって緑の流れになる予定。



私はオージープランツ(オーストラリアの植物)が好きなのですが、ここに自分の趣味を当てはめてしまうといかにもそぐわないから、仕方ありません。
めいっぱい和風に仕上げてみました。

私の愛樹のひとつ、スノーウィーリバーアカシア。
オージープランツです。



今の心配は、苔が活着してくれるかどうか(けっこうデリケートで、移植で失敗する)。

それと、ガーデンシクラメンが弱って葉を全部枯らしたこと。
球根はまだしっかりしているので、芽が出てくれるといいのだけど・・・






と、いうわけで、ガーデンデザイナーのご用命はお気軽にどうぞ!
年中無休です。

         穴掘リハ当方ニ!


(えーっと、念のため。ご用命は承っておりません。)

4/18/2009

夜の訪問者

さて、もう”いまさら”の感もある信州最終夜ですが・・・

お正月に、犬たちの食料危機があったことを覚えておいでだろうか。

姿は見えねども、おそらくきつねにやられたと思われたあの事件

今回、犯人が明らかになりました。






3月17日の大犬どもの朝ご飯は、こちら。

(写真を撮らなかったので、なみかたさんから拝借)

ラムのランバーボーン、つまりは腰椎です。


みんな喜んでくれるだろうと思ったのですが、うっかり忘れていました、ガディ爺さんのラム嫌いを。

最初は喜んで飛びついたものの、一口、二口齧って、
 「ヤッパリダメ・・・」
と放棄してしまったラム骨。

          食ベンモンネ〜〜
まー にくらしい。

けっこう大きいので、さすがに他の連中に食べてもらうというわけにはいかない。
とりあえず、ビニール袋に入れて、冷蔵庫に保管。


他の4頭も、周りはきれいに齧り尽くしているが、
椎体(背骨の本体部分)はさすがに噛み砕けないようで残っている。
こんな感じ。(もうちょっと食べてるけど)

(これもなみかたさんから無断拝借)

あまり丈夫なところをガリガリやって歯が欠けても困るので、
(実は既にちょっと欠けてるんです、うちの連中)

            見ル?

        チョット待ッテネ・・・

            ホラ!

残りは回収して、こちらはゴミ箱行きとなった。






さて、夕方。
ガディのまるまる残した分をどうしよう、と母と相談。

敷地内に放って帰ったら、野生動物が食べるんじゃない?
もし動物が食べてくれなくても、自然に腐って分解されれば肥料として還元されるから、ゴミにするよりまだ羊も浮かばれるかも。

でもまてよ。
せっかくなら、今夜置いたらどう?
明朝、うちの犬たちが見つけないような、敷地の奥の方に置いておこうよ。

そうしよう、そうしよう・・・


ということになった。





夜の帳がおり、辺りが真の闇になってもすぐには家に入れてもらえない犬たち。
(家の中で彼らが自由にできるスペースがほとんど
 ないので)

参照画像(普段は照明はない。撮影用に点灯)


と、急に彼らが吠え始めた。
まさか、雪の中、夜の山を散歩する酔狂がいるのか?
それとも、獣か?

プロムナードの外灯を点けて(普段は電気代がもったいないので消している)デッキに出てみれば、我が敷地の入り口付近で、ソフィさんがなにやら隠密行動中らしく、旗のように立てたしっぽを、左右にワサワサと振っている。
何か野生動物でもいたのだろう。

参照画像(いつもの公園で撮影)

残りの根性なし連中はデッキに残って、そちら方面に向かって、遠くからやんややんやと吠えていた。
冴えないね、お前たち。

こちらも参照画像



それからしばらく経って、ぼちぼち犬を家に入れることに。

当然、年功序列なので、まずガディ。
続いてソフィ、ルース、と屋内に収納。

ガディだけは足を洗わねばならない(室内ウロウロを許されているので)し、他の連中も一応足の裏を拭いて入れる(クレートがあまり泥だらけになるのも嫌なので)し、また、入れる際に、一頭一頭、体のチェックとコミュニケーションを兼ねてタッチングをしているので、けっこう時間がかかる。


ちょうどルースを撫でているときだった。


少し離れたところから、激しい叫び声が響いた。

ギャーッ、ウギャギャギャ・・・と、ちょうど、赤ん坊がひせって泣くような、異様な声。
もしチワワが外に出ている時だったら、きっとチワワが獣に襲われたんだと思ったろう。

           怖イヨ
うん、それよりフラ、頭が焦げるよ


急いでウェルとホープを呼び戻し、家に入れると、叫び声は治まった。


母と外に出てみたが、闇は静まり返っている。
ムササビかな、それとも、小動物がきつねにでも捕まったかな?なにか威嚇するような声でもあったね、

           コンナ?
と話しながら家に入ると。

ガディ爺さんがトイレを要求していた。
えー・・・


今しがた、わけの分からない叫び声がしていた山の中に、爺さんとふたりで出ていくのは気が進まなかったが、仕方がない。

そうそう、ついでに、件のランバーボーンも置いてこよう、と冷蔵庫から取り出してデッキを降りかけていると、母が屈託なく声をかてきた。
 「なるべく遠くに置いた方がいいんじゃない?」
鬼ー・・・


もちろん、暗い林の奥までなんて、行くものか。

ガディさんがおしっこしてる間に、デッキから5mほど離れた、テーブルセットの陰にボーンを置いてみた。
ここなら、人や犬の気配からは少し物陰になっているから、いいんじゃないかしら、と思って。




きびすを返してガディの元に戻り、うんこをするよう促す。(小分けに要求されるのはかなわんから)
ワシ、今ハシトウナイ、と言うのを、悪いこと言わないから頑張ってみなさい、と励ます。

ソレデハ、とテーブルセットの方に少し進んで、きばり始めたガディが、ふと顔を上げた。
何かいるの、ガディ?と私も家の方を見た。


そのとき。
小さな影がデッキの陰から走り出てきて、ウンチングスタイルのガディの目の前3mほどのところを横切り、テーブルセットの横をかすめて、敷地の林の奥へと消えていったのだ。
あっという間だったが、姿をしっかり見るだけの時間は十分あった。


きつねだ。

結構小さい。ふっさりした尻尾は長いが、胴体だけなら、コーギーくらい(もっと細身だが)しかないんじゃないか。
毛色は枯葉色でちょっと黒っぽかった。

これはホの字(5ヶ月くらいの頃)

早くも匂いを嗅ぎ付けてきたのか。
でも、立ち止まってボーンをくわえた様子はなかった(一直線に突っ走った)し、第一、あの体ではボーンを運ぶのはひと苦労だろうと思いつつ、念のため確認。

・・・つい1、2分ほど前に私が置いたばかりのランバーボーンは、影も形もなかった。


無事うんこを完了したガディのお尻を押してデッキを上がり、部屋に戻って母に報告すると、母も興奮して、「見たかった!」とくやしがる。
へへん、私だけ怖い思いをさせるからだ。

           罰ガ当タッタ


そういえば、昼間捨てたランバーボーンの残り、ぶきっちょルースなんかはけっこう身も残っていたし、あれも置いてあげたらどうだろう、とゴミ箱から掘り出して、母と二人して同じ場所に置く。

時々覗いてみたけど、さすがに今度はすぐには来ない。
さっきの獲物も食べてるだろうし、巣が遠いかもしれないしね。



約1時間後、骨が無くなっていることに気づいた。
(ガーデンテーブルの陰だが、洗面所から見えるのだ)
同時に母が、「そこにいる!」


洗面所のガラス窓のすぐ下、目と鼻の先に、立派なきつねが立っていた。

デッキへ上がる階段の下で、あたりを調べている。
そして、悠然と片足をあげ、カツラの木の根元にマーキングをした・・・
(翌日観察してると、みんながチェックしていた↓)







我が家の犬たちと雰囲気がそっくりで、まるで自分の犬を見ているような気がする。

それにしても、さっきよりずいぶん大きい。貫禄も迫力もあるし。
お父さんぎつねだろうか?


そこではっと気づいて、私はビデオカメラを取りに行ったのだった。
それでは、ほんとに一瞬ですが、どうぞ。




このあと彼は、薪小屋の方に行ったり、家の正面からこちらを見上げたりしてひとしきり散策してから、闇の中に姿を消した。





おそらく、林の中から響いた声は、きつねのものだったのだろう。

ソフィ・ルースがいる間は、犬たちの方が優勢だったに違いない。
数でも勝っているし、それにソフィなら、きつねにも勝てるだろう。(百戦錬磨なので)

            フッ

上位の犬たちが一頭ずつ家に入り、ウェル・ホープと下っ端だけになったところで、形勢が逆転したのではないだろうか。

きつねのほうが優位になり、威嚇し始めたのだ。
「俺たちの時間だ、早く引っ込め」と。
(だから引っ込んだら静かになった)

           負ケチッタ


きつねは一頭でなく、家族で動いていたのだろう。

むこうみずな子どもが、肉の匂いに勝てず、人間と犬がいるにも関わらず飛び出してしまった。
父ちゃんに、
 「軽率なことをして!」
と叱られているやら、
 「うんうん、お前も一人前になった」
と誉められているやら。




実はこの前夜、夜中の3時にホープがトイレを要求したので外へ出してやり、そのまま忘れて私が布団で眠り込んでしまい、朝6時まで雪の中で放ったらかしになるという出来事があった。
その後、昼頃に2回ほど、ホープは白っぽい水様便をした。

母が言うことには、
 「きつねとかを襲って食べて、お腹壊したんじゃ
  ないの?」

んなもん無理無理!と一蹴した、その時の私の言葉を、母は遅ればせながら納得してくれたようである。

            シュン





明日からは、おいしい思いはできないきつねたち。

私たちに、ひととき、野生の生活に思いを馳せる時間をくれた彼らに感謝しつつ、我らは何の残飯も残さず
次の日山を降りた。