9/27/2015

どこの猫?





さて、我が家に宿を取ったおこぶ氏。

翌日さっそくシマント先生(四万十のかかりつけ獣医さん)のところへ連れて行った。

先生、ひと目見るなり、
 「ずいぶんきれいやねえ」
あ、やっぱり。

ざっと見たぶんだと、ノミもいなさそうだとのこと。
きれいに去勢もしてあるし、シマント先生から見ても、飼い猫なんではないかとの意見だった。
ちまちまとケガはあった
(上:前足の傷 下:後ろ肉球の傷)

感染症含め、血液検査をしてもらおうと思っていたけれど、もう少し飼い主さんを探してからの方がいいのではとのアドバイスに従い、念のためのレボリューションを処方してもらうのみにした。
体重は5.4kg。
おこげ・おもちでも4kgちょっとだから、そりゃ抱いたときに重い感じがするわけだ。





で、おこぶをどうするかだが。
まずは、飼い主さんを探す。
これが最優先だろう。

とにかく人懐っこく、なかなかハンサムなおこぶ。
飼い主さんがいるなら、さぞ探していることだろう。
てなわけで、張り紙を作った。
おこぶが流れてきた方の集落の近くに一枚。
(それより奥は深い山のみ)
おこぶがウロウロしていた四つ辻に一枚。
とりあえず近隣で1週間様子を見て、反応がなければ張り紙をする範囲を広げ、ホームセンターなどにも貼らせてもらおうと考えた。
職場で、猫好きの看護師さんたちにも地元の人脈を生かした情報収集を頼んだ。

で、アニューの夕散歩の時に、書き込みがないか確認。



反応は数日であった。
四つ辻側の張り紙に、
 「猫の関係者です <電話番号> 電話下さい」
とメモがあったのだ。
一日、当直で確認に行けなかったせいか、念入りに2つもメモがついていた。
ア:帰リ道、ナンカ寂シソウヤッタヨネ

うん、おこぶともうお別れかと考えると、思った以上に、ちょっとね・・・



関係者ってなんだろう、うちのお婆ちゃんの猫です、みたいな感じかな?と思いつつ電話をすると、向こうは初老の男性くらいの枯れた声。
おこぶは野良で、その男性と、もう一人、若い人で餌をやっていた人がいるという。
 「あの猫はあそこで楽しくやれてたようでねえ」
男性も一度保護したがあの場所に戻ってしまったのだそうだ。
(田舎の家はオープンだしね)

おこぶがいた四つ辻は捨て猫・捨て犬が多いらしく、そんな中でイノシシの罠にかかって足を失う犬の話、捨てた飼い主を待ったままその場所で死んでいた犬の話、よその猫を捨てに来る猫嫌いの人の話など、お互いの名前も知らぬまま、けっこう長時間話し込んだ。

男性は、四つ辻に田んぼと作業小屋があり、畑仕事に来た際にその小屋で猫たちに餌をやっているのだそうだ。
ドライフードも食べるけど、缶詰も好きだよ、など教えてくれた。

おこぶは、ふっつり姿を見せなくなったので、若い人も「どこかで死んだのだ、こんなとなら保護しておけば良かった」と嘆いていた矢先に、張り紙を見つけたとのこと。
 「個人情報のこともあるし、(電話は)かかってこないのでは?」
と話しながらダメもとでメモをつけたんだという。

戻してくれと言われたら、交通事故の心配などを話した上で戻そうかとあれこれ考えながら話していたら、保護してくれたんなら好きなようにしてくれて構わない、もう一人の餌をやってた若い人にも話しておく、と言ってくれた。
信用してくれた、てことかな。
気持ちよく受話器を置いた。
電話の向こうの男性も、同じ気持ちでいてくれたらいいな。



翌日、こんな張り紙を四つ辻に貼ってきた。
今回は書き込みはなかったけれど、きっと見てくれたと信じて、1週間で撤去した。
あと、頼んでいた看護師さんからも、野良猫だという情報をもらった。





これでおこぶは当面我が家で暮らすことになった。
次には、うちに迎えるか、新たな家族を探すかを決める段階だ。



ポイントは二つある。

ひとつは、感染症の有無。
特に我が家には猫白血病ウイルスキャリアのおむすびがいる(それに、おこげやおもちもワクチンを打っているとはいえ、絶対うつっていないとは言えない)から、より慎重にならざるを得ない。
すっかりとけこんで、濃厚接触なのである



もうひとつは、当然ながら相性の問題だ。
おこぶは立派な成猫なので、もし『犬ダメ絶対』な性格なら、我が家では地獄の日々だろう。

感染症は、9月初旬に帰阪の予定が決まっていたので、オオサカ先生のところで調べてもらうことにした。
どのみち、我が家に慣らすには時間をかける必要があるのだから、それまでは隔離状態で徐々に犬猫に慣らして様子をみることに。
実は一番
たくましいのはおむすびです
も:僕疲レルワ

帰阪までの一ヶ月ちょっとで、他の猫と上手くやれるか、犬はどうか、など、おこぶの気性も分かってくるだろう。
里親探しをすることになった場合も、条件を決めやすい。



そうして、おこぶの板の間暮らしが始まった。
傷もあっという間に治った









9/18/2015

新たなる猫?

こんちは。

小生は猫である。名を・・・
おこぶ、というらしい。

5月はじめに、やたら犬臭い家の植え桝のヘリを歩いていたら、鶏どもに取り囲まれて騒がれた。
それを家の窓越しに、老婦人が眺めていたのは知ってる。





それから10日くらいして、その家の門のそばで日なたぼっこしていたら、また鶏に見つけられてコケー、コケーと騒がれた。
すると、門の方から
 「ただいま、ピヨちゃんたち〜。何騒いでるの」
と声がして、誰かが歩いてきた。
見ると、長靴を履いて小汚い格好をしたおばさんだ。

おばさんは小生を見ると、
 「あら、どしたの、こんなところに。」
と話しかけてきた。
鶏たちはおばさんの周りに集まっておとなしくなった。

心配なさそうな気がしたので、こんちわ、はじめまして、と挨拶しながら寄っていくと、おばさんずいぶんな喜びよう。
そこで、礼儀正しく寝転がった。
これは猫好き人間に対するマナーだと思っている。
おばさんは小生の横腹を撫でつつ、ボソボソ独りごとを言いだした。
 「お母さん?あのね、人懐こい猫がいるからオジャコ持って来て」

ほどなく、先日窓からこちらを見ていた老婦人がやってきた。
老婦人にも挨拶をしていると、おばさんがオジャコを差し出してくる。
ちょっと古い匂いがしたけど、大きくて美味しそうだったので、遠慮なくごちそうになった。
食べてる間に、おばさんが小生のお尻をしげしげ見ている。
 「去勢された雄、かなあ?」
 「きれいな猫だね、外飼いの飼い猫かも」
 「でも今まで見かけたことないけどなあ」
老婦人と二人で、なにを詮議しているのやら。

おじゃこを食べ終えた後も寝転んだままの小生を、おばさんがおもむろに抱き上げた。
抱っこされるのはけっこう好きだ。
 「重っ!」
なんかおばさんが言ってるが気にしない。
体の力を抜いて抱っこを堪能する。
ここちよく抱かれたまま坂を上がり、先日の犬臭い家の玄関まで来た。

と、ここで小生、地面に下ろされる。
 「ごめんね、せめて家のそばで過ごしなさいな」
 「中には犬猫がうじゃうじゃしてるからね」
たしかに屋内からはワケの分からないオーラが絡み合って流れ出ている。
まあ、無理に入れろとは言わない。
しばしここで休んでいこう。
台所の窓から撮影

1時間ほど鶏を眺めつつゴロゴロし、また気のおもむくまま、敷地を立ち去った。





何日かしてまた訪ねてみたら、ちょうどおばさんがピンクの重そうな箱を片手に提げて出かけるところだった。

久しぶり、と寄っていこうとしたら、ピンクの箱から耳障りな遠吠えがし始めた。
中に何者かいるのだ。
何者ガイタンダカ

たどたどしいくせにやたら大きいその声を聞いたとたん気分がのらなくなり、後ずさる。
少しうろたえた風で「お、おこぶ、おこぶ!」と呼びかけるおばさんを残してその場を去った。
おこぶってなんだ、と後から考えたが、それが小生の名前になったのだと気づくのにはもう少し日がかかった。





それからも、何度かおばさんには道で遇った。

おばさんの家からそこそこ離れた辺りに、わりと大きな四つ辻があるので、そこを拠点に決めたんだが、おばさんは毎朝夕そこを通る。
たいてい車に乗っていて、小生を見かけると窓を開け、「おこぶよう」と声をかけてくる。
小生も、やあやあ、雨ばかりだねえ、と返事をする。

そんな日がしばらく続いた。





ある夕方のこと。

珍しく雨が降っていなかったので、小生、ふと思いついてアスファルトの真ん中で午睡をすることにした。
そこらにたくさんいるカニどもも、物陰に寄り添う習性から小生に寄ってくる。
少し煩いが、無害な連中なので一緒にのんびりしていた。

しばらくして、地面から音が伝わってきた。
坂の上から車が来てるんだなと横たわったままぼんやり思う。

ずいぶん手前で車の速度が急に落ちたようだった。
その車がのろのろと進んでそばまで来ると、カニどもがあわてて小生から離れ、側溝へ逃げ込んだ。
落ち着きのないやつらめ、と目を閉じたまま考える。

通り過ぎた車がすぐ先に停まった気配がする。
バタン、とドアの音がして、うわずった声が小生を呼んだ。
 「おこぶっ・・・!?」

ああ、おばさんだったのか。
なんじゃらほい、と顔を上げてそちらを見ると、ひきつった顔でおばさんが睨んでいる。
召サレタカト思ッタンダト

どうもいつもと雰囲気が違うので、様子を見ようと起き上がって近づいたら、おばさんが大きく息を吐いた。
 「おこぶ・・・もう」
何が「もう」なのか分からなかったが、どうしたんだ、大丈夫かい、と声をかけてやったら、おばさんは無言でやたら小生を撫で回した。
お腹もぐいぐい押したり口をのぞき込んだりする。

 「びっくりしたやんか。驚かさんとってよ」
 「轢かれたのかと思ったわ」
と、急にいつものおばさんの様子に戻って言ったかと思うと、小生を抱き上げ、どうするのかと思ったら車の運転席にぽいと乗せた。
 「うちに来る?」

一瞬は、それもいいか、と思いながら車内を見回したが、ふと車の後ろを見ると、ずらりと並んだ箱、箱、箱。
そしてそこから、いろんな怪しい匂いが混ざり合って漂ってくる。
なんだこれ。おばさんちはいったい何がどれだけ住んでるんだ。
こんな感じっすよ

いや、これはちょっと・・・。
やっぱりねぐらに帰ることにし、小生に続いて乗り込もうとしたおばさんとすれ違うように、ひらりと降りた。

おばさん、また降りて追いかけてくる。
今日のおばさんは、なんだか変だ。
 「嫌やった?ごめんねえ、そうか、嫌か・・・」
小生の頭を撫でると、寂しそうにきびすを返し、車を発進させて去った。
許せおばさんよ、小生だって、どうすればいいか分からん。



実は、このあと近くの藪の中を歩いていると、車で去ったはずのおばさんが、向こうから猛烈な勢いで歩いてくるのが見えた。
さっきのこともあるし、ここは出ていかずに様子を見ることにした。
すると、
 「おこぶー。おこぶー。出ておいで」
小生を呼ばわりながら、その辺でしばらくうろうろしている。
日も暮れかかり、小雨も降り出した。
おばさんは溜息をついて、握りしめていた手から、おじゃこを2匹ほど、少しひらけた草地に置いた。
「ウチ、オヤツト言エバ」
「ウン、オジャコダヨネ」

よし、あれは、夜食にしよう。
そのままとぼとぼと元来た道を帰っていくおばさん。
一定の距離を開けながら、おじゃこを数匹ずつ置いている。
やっぱり今日のおばさんはおかしいぞ。まあ、おじゃこは頂くけど。





そうして、また何日かが過ぎた。
相変わらず雨の日が続く。

が、昨日くらいから、空模様がちとおかしい。
いつも以上に雨風が強いし、巡回でうろつく集落では、妙に家の周りが片付いている。
いつもはいろんな物が置いてあるのに。
空気の感じが、なんとなく不穏だった。
いつものねぐらにいても、気持ちが落ち着かない。
夕方早いうちから、車の往来も急に減った。

不安な気持ちで道路をのぞいていると、見慣れた車が通りかかった。
おばさんだ。
四つ辻に来るといったん速度を落としたが、隠れている小生には気づかず、夕暮れ時の道を、そのまま走り去った。

おばさんの車が坂を上がって見えなくなると、急に心細さが増した。
乗せてもらえば良かった、という後悔の念が湧き上がる。
だがもう遅い。

ねぐらに戻っても、安心して横になることもできない。
日が沈んでから、風はさらに強くなっている。
ごうごうと地鳴りのような音もする。

いたたまれず、最後におばさんに会った四つ辻の道路脇に出ていって、座った。
今日はカニも出て来ない。
辺りは街灯もなく、真っ暗だ。
小生、夜目は利くが、生き物の姿が見あたらないから、目に入るのは雨粒と、強風にあおられる木や草の葉ばかり・・・

その時、坂の上から、ライトの光が近づいてきた。
まだ通りかかる車があったのか。
道路脇ギリギリだから、轢かれはすまい。じっとしていた。
車の窓は、雨にも関わらず開いていた。いや、ちょっと手前で開けられたようだ。
 「おこぶだ!」
 「まさか、夜は見かけたことなかったのに!」
おばさんだった。

横を行きすぎ、5mほど先の辻を曲がった先で停まった音がした。
まったく反射的に立ち上がり、おばさんの車を追いかけた。
小生が車のドアの横に追いつくのと、ドアが開くのと同時だった。

おばさんと、助手席からは馬鹿みたいにでかい男の人が降りてきた。
思わず、おう、おばさんよう、と声をかけると、おばさんはそばにしゃがみ込み、小生を撫でながら言った。
 「良かった、おこぶも待ってたんか。帰ろう、一緒に」

雨で地面が濡れていたので、小生は礼儀正しく寝転ぶことができなかったが、おばさんは湿った小生の体を抱き上げ、助手席に再び乗り込んで目を細めている男の人に手渡した。
男の人は、でかい図体のわりに裏声で
 「よしよし、おこぶちゃんよ」
と話しかけてくる。
初対面だったが、おばさんや老婦人と同じ匂いがし、同じ群れなんだなと分かったから、心配はしなかった。
心配どころか、先ほどまで胸いっぱいにつかえていた不安感や心細さがいつのまにか消え失せている。
気づくと、小生ののどはごろごろごろとまろやかに鳴っていた。





こうして、小生は今、おばさんの家にやっかいになっている。
ひと部屋もらって、ときどき入ってくるおばさんや老婦人と遊んだりしながら日がな一日のんびり過ごす。
板戸越しに、いろんな匂いや鳴き声がしてくるが、中に入ってみると、みな穏やかで敵意はないようだ。
ときどき板戸の隙間から覗いてみる。
板戸の向こうから、小生意気な白いチビ犬がフンフン鼻を鳴らして威張っていたので、一発シャーッと言ってやったが、まったく意に介さないのには拍子抜けしてしまった。

またある晩は、真夜中に板戸がスッと開けられたと思うと、サビ色の猫を先頭に、灰色の猫と、白黒の猫が入ってきた。
お互い無言で相手を伺ったが、サビ猫と白黒猫はすぐ出ていった。
灰猫だけが、小生の住み処のまわりを文句ありげに歩き回るので、自慢の低音で凄んでやったところ、物音がして、おばさんが板戸をガラリと開けて駆けつけた。
肝心の灰猫は、小生の低音に唸りかえすでもなく、柵越しにこちらを睨んでいたが、おばさんに見つかると急に慌て、おばさんの足にぶつかったりしながら飛び出ていった。



まだ板戸で仕切られた部屋からは出してもらえないが、なんとなく時間の問題かな、という気がしている。
おばさんは、小生の猫生を遡って、もとの居所を見つけようとしているようだ。
正直言って、小生はどうでもいい。
過ぎ去ったことを考えるヒマは小生にはない。大事なのは、今と、ほんの少し先のことだけ。
ずっと先のことを考えるのもまた、時間のムダだと思っている。

さて、今夜はおばさん、なにして遊んでくれるだろうか。
小生の必殺カミカミけりけり攻撃に浮き足立つおばさんを見るのもまた一興。

おっと、その前に晩ごはんのようだ・・・





7月17日に書いて放置していた日記を、そのままアップしました。

初めておこぶが我が家の敷地に姿を現したのが4月末。
そのことを母から聞いていた私が、実際におこぶに出会ったのは5月13日でした。
鶏たちを襲うでもなく、初対面の私にも甘える様子は、どうみても飼い猫。
出会った頃のおむすびのやつれた姿とは対照的に、毛づやも良く元気いっぱいでした。
だから、家には入れなかったのです。

とは言え、人家はかなり離れているし、迷い猫の可能性もなくはない、としばらく様子をみることに。
数日は我が家近辺にいましたが、やがて、500mほど離れた四つ辻を拠点にしたようでした。

交通量は多くない代わりに、無謀に飛ばす(しかも下手)車が多いこの地域。
いつのまにか、毎日おこぶのことが頭から離れなくなっていたある日、道路の真ん中で長く伸びる物体を目にします。
どうか、おこぶではありませんように、生き物ではありませんように、と祈る思いで近づくと、やはりおこぶ。
私の車が側を通っても微動だにしない上、体からカニたちが数匹ワーッと離れました。
ああ、轢かれたおこぶを、カニたちが食べ始めてたんだ・・・と血の気が引いたものです。
無事を確認できた時は、体の力が抜けました。

さすがに、飼い猫でも構うもんか、連れ帰ろうと車に乗せたのですが、後部座席を嗅いで降りてしまい、犬達の匂いに脅えさせてしまったかと、一度は諦めて帰宅しました。
それまで何度か犬の散歩中に出会い、私だけの時と違ってすごい勢いで逃げられたので、犬が苦手なんだと思っていたのです。
しかし私の話を聞いた母に、それはやはり何かのしるしじゃないか、今保護しないと、何かあってから悔やんでも遅いよと背中を押され、おじゃこを持って徒歩で迎えに行きました。

結局その時はもう姿を現さず、ならば餌付けしようと、誘導のおじゃこを道すがら置いて帰宅しました。
その後、何度かゲートの側に餌を置きましたが、毎日のように大雨で、思うように餌付けが進みませんでした。

そうこうしているうち、超大型(というふれ込みの)台風11号が上陸コースで迫ってきます。
いよいよ今夜上陸という7月15日の夕方、こちらに来ていた愚弟と車で出る用事があり、
 「今日おこぶを見かけたら、もう絶対保護するで!」
と決め、四つ辻で車の窓越しに探しました。
が、姿はなく、
 「縁がなかったんかな」
 「いや、やっぱり飼い猫で、この悪天候で家に帰ったんやで」
 「きっとそうやな」
と言いながら通過しました。

用を済ませる頃には、台風の影響もあってもう真っ暗。
それまで夜間に姿を見たことは一度もなかったので、
 「もう帰りに会うことはないと思うわ」
と話しながら四つ辻まで帰ってくると、あにはからんや、道路脇におこぶが座っていたのです。

安全な場所に車を寄せて停め、迎えに行こうと降りたら、もうおこぶが真横まで追いかけてきていました。
なんの苦労もなかった、というか、おこぶ自ら我が家に来たと言った方がいいかもしれません。
初対面の愚弟にも喉を鳴らしていました。

こうして、おむすびの時と同じように、普段使わないお客用の部屋をおこぶ部屋にして、迎え入れたのです。