1/31/2014

作戦変更




この1週間ほど、少しばかり悩んだ。

前回の日記をアップした翌日、オオサカ先生からメールが届いた。
それは、今度こげもちに打つつもりの、新しい猫白血病ウイルスワクチンについての詳しい情報だった。
製薬会社の学術担当の人にいろいろ具体的に訊いて下さったのだ。


悩みの種になったのは、その情報の中の、感染防御率の点だ。
ワクチンを打った場合の猫白血病ウイルスの感染防御率は、なんと70%なのだそうだ。
ナ、ナナジュウ・・・

ヒトのインフルエンザワクチンなどとは違い、猫白血病ウイルスワクチンはいくつも型があるとは聞かないし、9割くらいは防げるのかとなんとなく思っていた。
(もうひとつ、なんとなく終生免疫かと思っていた)

製薬会社の姿勢としては、感染動物は隔離されていることが前提で、その上での不慮の接触に備えてのワクチン、ということになるらしい。




3割の感染率か・・・

今、おこげもおもちもまったくの健康体であるだけに、少し悩んだ。
(ちなみに、従来の猫白血病ウイルスワクチンに至っては50%台らしい)


しかし、猫達のことを主体に考えれば、本当は悩むことはないのだ。

おむすびの気性を見ていれば分かる。
たぶん、新しい家に行けばすぐにそこで馴染み、新しい飼い主さんのことが大好きになれる子だ。
ベストの答えは簡単、おむすびに最良の里親さんを見つけてやる。
そうすれば、猫は三匹とも幸せなままでいられる。


おむすびが猫白血病ウイルスキャリアと判明してしばらくは、完全に里親探し方向で考えていた。

だが、それほど日が経たない間に、私がおむすびの虜になり、なんとか陰転させて家族にしたくなったのだ。
ソ&ウ?と先代おもち&おこげとわたくし
(先代おもちが亡くなる3日前、母撮影)

やはり、感情に流されず、治療と平行して里親探しを続けておくべきだった。
私がそうしなかったから、ベストの方針にはもうあまり時間をかけられなくなった。

もうかれこれ3ヶ月、おむすびは一部屋で過ごしている。
白血病ウイルスキャリアのおむすびに、すぐ里親さんが見つかるとは考えにくい。
今からさらに何ヶ月も、この小さなスペースで、ただでさえ短い猫生を過ごさせるわけにはいかない。
そこで、次善策も必要になった。

もともと、こげもちのワクチンを2月下旬に打つことにしていた。
だから、それまで里親探しメインでいくが、それまでに見つからねば、予定通りにこげもちにワクチンを打ち、合流させる。
これが次善策だ。

もちろん、合流後も、おむすびによいご縁があれば結びたい。




合流させることで、もしかしたらこげもちも感染してしまうかもしれない。
それは考えるだけで辛い。
おこげとおもちの健康だって守らねばならない。
しかし、「絶対に感染させない」ことだけに集中しすぎてもおかしくなる気がする。
猫もヒトもともに無理をしてまで感染を完全に防いでみても、他に何があるか分からない。

先代おもちなんて、猫エイズも猫白血病もマイナスだったけど、ほんの7ヶ月で猫生を終えた。
先代:スグ神様ニ呼ビ戻サレチャッタ

それも、猫を迎えてから爪楊枝だってしまいこんで気をつけていたのに、体より長い菜箸をしかも縦に咥えて走るだなんて。


だから、あまり一点を見つめて必死になっていると、そばで眺めている『運命』に、笑いながら足もとをすくわれる気がしてしようがない。

頑張ってもムダということではない。最善は尽くさねばならない。
だが、ひとつの事ばかりにこだわり過ぎることなく、少し下がって離れたところから見、全体的に幸せになれているかどうかを考えることを忘れてはいけない。
部分
全体
巻キ込マレルトコロダッタ


もともと猫白血病ウイルスはそれほど感染力が強いわけではない。
ワクチンで感染率を7割方減らせるなら、良い方の割合がずいぶん高い。

おもちとおこげの健康にさらに注意を払い、万が一感染してもキャリアにならずにすむように、抵抗力をつける。
おむすびには、こげもちのワクチンが効き始めたら、なるべく早く合流させてのびのび楽しく過ごしてもらう。

そうやって楽しく過ごしながら、もしどこかの時点でおむすびに良い里親さんが見つかったら、迎えてもらう。




急遽、こんな方針にしました。
皆様、もしよい里親候補の方がおられましたら、自薦・他薦問いませんので、よろしくお願いします。


あ、条件は、

完全室内飼い(猫白血病ウイルスキャリアなので必須項目)
必要なお金はきちんとかけられる
おむすびを我が家と同等以上に幸せにしてくれる

です。
これ以上の細かいところは、私が直接お話しして検討します。
おむすびの一生がかかっていますゆえ、がっぷり四つで取り組みますのでいざお覚悟を。
















1/25/2014

おむすびってね・・・




はっきり言って、おむすびはかわいい。
とってもかわいい。
本当に本当にかわいい。
なにがかわいいって、まず、人懐こい。
それから、優しくて、嫌なことをされても爪を立てたり噛みついたりしない。
それから、根に持たない。




人懐こい話・・・


保護当初はお客用寝室をおむすび部屋にしていたのだけど、広くて板張りなので暖房効率が悪いため、私の寝室に移動させた。

足音で人が近づくのが分かるのか、ドアを開けるとたいてい入り口の真ん前で待機している。
巣箱の中で眠り込んでいたときは、急いで起き出してくる。
(いつもってわけにはいかない。
眠くて目が開かないことだってある)

そしてニャニャニャ・・・と顔を見上げて鳴きながらベッドに駆け上がり、ごろんとヘソ天になる。
視線はずっと人の顔に向けられたまま。
そして大音量のゴロゴロゴロ。
お腹を撫でてやったら、嬉しくてもだえている。

部屋を出ようとするとヘソ天のまま前足を伸ばし、行かないで、とばかりに両手でこちらの手をつかまえる。
そのつかまえ方がまた、ふわりと柔らかい。

人の手をぺろぺろ舐め、奥歯でそっと囓り、顔だの背中だのをこすりつけてくる。
一緒にいる間中、ずっとゴロゴロ言っているのだけど、膝に乗って眠り込んでしまったときだけ、ゴロゴロがやむ。


これほど人恋しくて、甘えん坊の猫が、山の中で独り過ごした日々はどんなだったろう。


実はおむすびに餌をやり始めた当初は、飼い猫にするかどうか決めていなかった。

自然の中でうまく生きていくなら、それもよいだろう。
ただ、どうしても避妊もしくは去勢までは受けさせておきたい。
それ以降は、捕まえてからの猫の様子次第にしよう、と考えていたのだ。
(集落に避妊去勢をせず増えるままにしている家があるのだ)

無理に人間や犬や他の猫に慣れさせてまで飼い猫にするつもりはなかった。


しかし、餌づけ開始後のおむすびの私への親しみようは予想外のものであった。

そして実際、捕まえて世話をしてみて、ああ、この子は人と共にいてこそ幸せな猫だと確信し、そこで初めてこのまま保護猫にしようと決めたのだった。



後押しになったことがもうひとつある。

おむすびに限った話ではなく、「野良猫を保護する」ということそのものについて少しばかり悩んでいた。

犬と違って群れで行動しない猫は、人間に飼われるより自分で自然の中で生きていく方が幸せなんではないか。
もしそうなら、たとえば交通事故に遭って死んでしまったとしても、それまでの猫生は彼(彼女)にとって充実したものであり、人間に囲い込まれて長く生きる猫よりも幸せかもしれない。

ちょうどそんなとき、Facebookでこのサイトを見かけた。

   おうちへかえろうプロジェクト
    —のら猫はしあわせ?—

特に、”冒険より睡眠。”の項。
ここを読んで、思わず知らずうなずいていた。

猫の行動範囲は広く、毎日何キロもなわばりのチェックに移動する—ということばかりが頭にあったけれど、考えてみれば、おこげもおもちも、ほとんど寝ている。
母のふかふかの羽布団などの快適な場所を選んで。
黒犬を枕にしつつ、茶犬に枕にされる

そしていったん遊ぶとなれば、家中を縦横無尽に駆け回り、エアコンの上まで駆け上がったり、流しでいたずらをしたり、お互い取っ組み合ったり、犬を獲物に見立てて狩りをしたりと、存分に楽しんでいる。
炊事の見学が大好き
でもよく寝落ちする

客観的に考えても、こげもちは外で暮らす猫に比べて不幸なようにはみえない。
外ニ行ッテミタイカッテ?
寒ソウダシ・・・

ならば、おむすびだって、彼女の気性次第では、飼われる方が幸せという可能性は大いにあるだろう。
生き物相手なのだから、どうするのがベストかは一匹一匹に合わせて考えればよい。

ま、こんな感じのことを考えながら餌やりを続けていたのだった。




優しい話・・・


おむすびは穏やかな猫だ。

今年になって獣医さんで採血をされたとき、バリカンの音が怖くてパニックになり、診察室から逃げ出した。
待合室の隅でシッポが倍くらいに膨らんで縮こまっているのを見つけたが、鼻先へ指を出したら匂いを嗅いだので、そっと抱き上げると暴れもせずにクレートに収まった。
その間、一度も引っ掻くそぶりも噛みつくそぶりも見せなかった。
少し落ち着いたのを見計らい、引き続き、耳のチェックや注射をすることができた。

なんだか暴れる猫よりストレスを溜めやすいのではないかと思う。
こちらが気をつけてやらないと。

毎日のインターフェロンの経口投与も初めはちょっと嫌そうだったが、すぐに慣れ、逆に喜んでゴロゴロいうようになった。




根に持たない話・・・


以前にも書いたとおり、保護当初、おむすびのしっぽのつけねには咬み傷があった。
その後、部屋の入り口から犬や猫が覗いた際、ブラウニーに火を吹いたのを見て、やっぱり犯人はブラウニーだったんだということになった。

ストレスがかかると免疫に悪いので、基本的に犬猫には会わせていなかったのだが、獣医さんに行くときには短時間ながらクレート越しに犬の姿を見ることになる。
初めは、私の手からクレートごと吹っ飛ぶ勢いでブラウニーに怒っていた。


ところが、いつのまにやら許してやったようだ。

今は、私の部屋を外から覗く犬達に、ガラス越しに寄っていくし、ブラウニーにも前足でちょいちょいとちょっかいを出そうとする。
黒犬を前足でエアちょいちょい中

全然犬達を怖がっていない。
む『ア、カミカミ君ダ』
む『コンニチハ』
ぶ『オヤ、コンニチハ』
(・・・ブラウニー、この猫咬んだこと忘れてるやろ)

この様子だと、犬猫と合流させてもすぐに馴染みそうだ。




さて、そんなおむすび、保護してから約2ヶ月間、猫白血病ウイルスをやっつけて脱キャリア、を目指して頑張った。
そして今月7日、意を決して再チェックを受けた。

結果は、やはり陽性。
強陽性ということになるのだろうか、コントロールより青々している。
一縷の望みをかけていたが、結果は残念だった。

だが、陰転しなかった場合の覚悟もしてあったので、もうこれ以上思い悩んでも仕方ない。
できるだけ発病しないよう、そして平均よりはるかに短い猫生であったとしても十分に幸せだったと感じてもらえるよう、最善を尽くすとしよう。

この2ヶ月間おむすびにしてきたことは、暖かくストレスのない環境を整えてやること、しっかり栄養をつけさせること、免疫によいと思われるサプリなどを使うこと。
おむすびのおかげで自室に煖房器を購入

そしておむすびの大好きな、愛情をたっぷり注ぐこと。
これらを同じように続けていくだけだ。


それと、インターフェロンは、ぷっつりやめてしまうのではなく、もうしばらくは無理ないペースで続けていくことにした。
これからは陰転が目標ではなく、抵抗力をつけさせ、発病させないことを目標として続行するのだ。(いつまで続けるかは未定)

経口投与はまったくストレスになっていないので、今まで通り。

注射は、シマント先生と相談し、今まで週に一回打っていたのを、2週に一回程度に減らすことにした。


こげもちには、まず猫白血病ワクチンを打たねばならない。
新しいワクチンは、シマント先生のところにはなく、仕入れるとなると10本単位になるため入れられないとのことで、オオサカ先生に取り寄せてもらって打つことになった。
おもて
うら

すぐには帰阪できないので、あと一月ほど隔離生活が続くのが可哀想だが、こげもちのワクチンが済んで皆と合流すれば、おむすびの幸せ度はさらにアップするに違いない。
コンナコトヤ
コンナコトシテ一緒ニ遊ボウ

それからもうひとつ。

いつか発病したときには、もちろんできるだけの手を尽くすが、もう和らぐことのない苦しみがおむすびに訪れたなら、私がその苦しみをできるだけ早く取り去ってやることも決めている。

できるだけ長く一緒にいたいのは当然だが、一緒にいる長さだけが大事なのではないことを、理屈ではなく身をもって、ムギや先代のおもちに教えてもらった。
最後まで、幸せなままでおむすびを天国に送りたい。




はっきりいって、おむすびはかわいい。
とってもかわいい。
本当に本当にかわいい。

他の猫より短い時間しかこの世では与えられなかったから、他の猫より何倍も愛されて幸せを受けられるように、神様がはからったのかもしれない。