8/16/2014

台風11号




先週末の台風はもの凄かったですね。


ここのところ、台風の「ヤバイヤバイ詐欺」が続いていたので、今度も日本に近づいた頃合いで温帯低気圧になるんちゃうのん、と思っていたらモロだった。





週半ばの台風12号は、それほど脅威は感じなかったけど、朝起きたら我が家のシンボルツリーの山桜の大枝が折れて大ショックだった。
愚弟が落ちた枝を切ってくれてた

少し先の方が枯れてて弱ってた枝だったけど、折れた拍子に隣の元気な枝まで巻き添えに。
2年くらい前の枝が元気な頃

さらに、下に植えてた銀梅花の1本に当たり、主幹がまっぷたつ。
まあでも、他はたいしたことなかった。





だからというわけではないが、続いての11号も、それほどとは思っていなかったんだよね。

もともと9日土曜日の夜は当直で、具合の悪い患者さんもいるし、ちょうどいいと思っていたら、金曜になって外科の先生が
 「明日は台風で晩飯食いに出るのも大変やし、俺当直やるで」
と言う。

うーん、まあ、単身赴任で病院隣接の官舎住まいの人だから、確かにこんな日はご飯もお風呂もテレビもエアコンもある病院の方がいいのかも。
少し迷ったけれど、悪天候時は私がいる方が犬達も落ち着くし、と替わってもらうことにした。

この時は「別にどっちでもいいんだけど、まあそう言うなら」という程度の気持ちだったのだが、後で心底感謝することになる。


12号から引き続き雨だったし、風もずっと強かったので、それなりの仕舞いはしてあって、あまり急いでやるべき準備ももうなかった。
裂けた銀梅花だって治した

土日が全部休みになったので、気楽といえば気楽でちょっとウキウキしてたくらいである。





しかし、土曜日の朝起きたら、すでに大荒れだった。

とても病院に行ける天候じゃない。
幸い、病院の官舎には脳外科の上司もいるので、お任せすることにした。


どんどん風は強くなるが、雷が鳴らないので犬達は平気の平左衛門。
(雨風がスゴイのはここいらでは珍しくないし)
朝夕の散歩以外でも、時々外へ出ていったりしていた。
見回り中
庭周りの最終チェック
川や水たまりは極力避けるくせに(ホープ除く)、雨風にさらされるのは意に介さないあたり、「粗食と悪天候に耐える」が謳い文句のグローネンダールらしくて大変よろしい。


鶏たちの様子も心配で何度か見に行ったが、波板で覆われているのが幸いし、小屋の中は平穏そのもの。
地面も湿ってはいるが、鶏たちも地べたに降りて、餌をついばんだり、こちらを見上げたりとのんきな様子である。

これがよく見るような、大部分が網になってる鶏小屋だったら大変だったろう。
今回は台風だが、よく考えたら、ここいらは本当に雨風がきつい。
屋根のすぐ下にも波板が張ってあるおかげで、夜間鶏たちが止まり木で寝ていれば雨も風も当たらない。
さすがいちえんさん監修の鶏小屋。
その道のプロがやることには、素人に分からぬ配慮があるのだなあ。


猫たちは、なんだか興奮していた。
3匹とも妙にはしゃいでいる。
普段のっそりしているおこげまで、取っ組み合いをして遊んでいる。

それを見ていたら私までテンションが上がり、思わずコンロ、食器乾燥機、シンクを徹底的に磨き上げてしまった。


途中、デッキに出ようとしたら、風圧でサッシが開きにくくなっている。

夕方頃には、ガラスがミシミシいい出したので雨戸を閉めたが、これまた風圧でなかなか閉めるのに骨が折れた。
この中を当直に行くなんてとうてい無理な話で、急遽、誰かに交代してもらわねばならなくなるところだった。
替わってくれた外科の先生に感謝。





夜になると、さすがに外の音は『激しい』とか『凄い』ではなく、『恐ろしい』ものになっていた。
嵐の音で恐怖を感じたのは初めてだった。
全ての雨戸を閉め切って外が見えないからよけいだ。

電線がちぎれるかもしれない。
風呂桶いっぱいに水を溜めて寝た。
(停電したら地下水を汲み上げるポンプが停まるので)


夜中、ルースの吠え声で起こされる。

時間を見ると2時過ぎだ。
風の音は10時過ぎに寝る前より格段に弱まっている。
台風、過ぎたのかな?
ボク、オ知ラセ係デス

ルースが吠えるときは必ず何か理由があって知らせているので、起き出して電気を・・・

点かない。
ううむ、予想通り停電か。

母まで起き出したが、ルースのお知らせ内容は、結局
 「フラがトイレからうんこを外した」
ということだった。
まあ、誰かが踏んづけたらタイヘンだしね。ありがとさん、ルース。
も:盗ミ食イモスグバラサレルヨ む:困ルヨネ 
も&む:ネー


片付けをして、ベッドに戻ったが、なんだか目が冴えて眠れない。

寝っ転がってFaceBookにコメントを書いてたら、Oさんから
 「もしかしてまだ起きてます?」
とメッセージ。
彼女も眠れなくて情報収集をしていたらしい。
四万十川にかかる赤鉄橋のあたりは、もうすぐ堤防の上に水面が届きそうなほど増水しているんだって。
台風12号の朝
河川敷の柳が頭しか出てない
しかしこの程度の増水は大雨でもなる

河川の水位の情報や、停電情報など、iPhoneのしょぼいネットで(停電してしまうとwifiが切れる上、我が家は3Gがやっとの通信環境貧弱地帯)チェックしていたらいつの間にか時刻は明け方に。
2時間半ほどで電気も戻った。
こんな夜にも停電復旧のため働いてくれてる人たちに感謝である。





日の出時刻を待って雨戸を開けると、雨はほとんど治まっていた。
ただ、風はまだ強い。

さっそく、犬達と被害状況の見回りに・・・
ん?
前の道の様子がなんかおかしい。
それに、ときどき山手の方(上の写真の左)から車が来てうちの前辺りで停まっては、Uターンして引き返していく。
田んぼが水に浸かってしまった(これは台風でなくとも大雨の後には時々ある)ので様子を見に来ているのかと思った。

そうじゃないことがゲートから出てみて分かった。
道路が冠水しているのだ。
これはまだ浅いところ

改めて見回すと、田んぼも道も、すべてが水の底。
家の前の小川
ふだん
家の前の田んぼ
ふだん
小道
ふだん
前の道から見た田んぼ
ふだん

我が家はさながら湖の中の一軒家という風情になっていた。

なんてこった。
田んぼの稲穂は実って重くこうべを垂れ、あとわずかで刈り取りを待つばかりになっていたのに・・・

水の様子を見に来ていたおじさんに教えてもらったのだが、これは四万十川支流の一つ、中筋川が増水したため水門を閉じ、それによって出た内水なのだそうだ。

うーん、なんだか分かったような分からないような。
たたずむおじさん

あとで友人から聞いた説明では、川の水が逆流しないように水門を閉める代わりに、山からの水なんかが行き場を失い、溢れるということらしい。
川の水量が減って水門が開かれれば、この内水も引いていくとのこと。
水門を開けるタイミングがなかなか難しいのだそうな。
たたずむ老母と愚弟

大阪じゃ無縁の話、飲み込むのに時間がかかったが、なんとなく分かった(ような気がする)。


しかし、早春から手塩にかけて育てた作物がすべて水の底というのに、四万十の人たちに絶望感や怒りはあまり感じない。

もちろん皆ひどく落胆はしている。
でも、同時に受け入れてもいるようだ。
川の氾濫を防ぐためならば、内水の被害は受け入れる覚悟が自然にできている。
これまで、四万十川の氾濫で本当に苦労してきたからこそなんだと思う。

日本は物質的に豊かになるあまり、何もかも満たされていないと不平不満が出やすくなっている気が私は常々している。
『川の氾濫はもってのほかだが、内水だって我慢ならん。どっちも起こらないようになんとかしろ』
という方向になりかねないこのご時世に、地元の人たちのこの心持ちは見事だ。

四万十川の恵みを受けながら、川と共に生きてきた四万十の人たち。
これが、四万十に暮らす誇りというものだろう。

どっぷり水の底で稲穂の黄金色が揺れるのを前に笑って話す地元の人たちの会話を聞きながら、台風明けの空のように爽やかな気持ちになった。


で、見渡す限りのこの内水、昼くらいには引くのかと思ったらむしろ増えていた。
なんでやねん・・・

途中で音量注意表示が出ます(私の声が入る)

結局夕方近くまでまったく引かず。





夕方、冠水した道路の水中写真を撮ってみようと思い立って道まで出たら、阿呆ープが敷地の囲いを壊して私を追ってきた。
じゃぶじゃぶ水にも入ってくるだけじゃなく、そのまま足もとの水を飲もうとか、水の中に座ろうとかする。
写真を撮るどころじゃなくなり、ホ坊を引っ張って撤収した。
水が平気になるのも善し悪しだわ・・・


それにしても、よく考えたら、完全に孤立している我が家。
まさに陸の孤島。
なのに、全然悲壮感のないお気楽ムードなのは、家族が全員揃っていたからかな。
東の崖から見た景色は美しかった
でも実は道が絶たれているのだ(左の方が道)
ふだん

当直してたら、結局日曜日は帰宅できず、そのまま病院でもう一泊し、次の月曜夕方までまる二日帰れないところだった。
交代してくれた外科の先生には本当に感謝。


夕方遅くになって水門が開かれたのか、暗くなり始めた頃に様子を見にいったら、少し水が引きはじめていた。
(水位は変わらないが澄んできた)





翌朝は、すっかり田んぼが姿を現し、問題なく出勤できたのだった。
敷地の木々は何本か倒れていたが、修復可能なものがほとんど。
鶏たちも元気

台風でもないのに強風で根こそぎ苗木が折れ飛んで姿がなくなっていた一年目と違い、木の数も増え、お互いに風の威力を弱めて助け合えているのだろう。


ただ、例の桜だけは、さらにメインの大枝が折れ、その下の、補修した銀梅花は完膚無きまでに再度へし折られていた。
スカスカ
左半分上側がごっそりなくなった
(枝が)在りし日の姿

まことに、自然は容赦ない。












4 件のコメント:

ベックマン さんのコメント...

コメント送ったら消えちゃいましたよ・・・??これは大丈夫かな??

ご家族全員(鶏ちゃんたちも)ご無事で、浸水もなくよかったよかったです。
こうやって今写真でみると、ほんとに見事に湖の中の一軒屋ですわね。間違ってるけど、綺麗だなぁと思っちゃいましたごめんさいm(._.)m
なんなんでしょね?嵐とかで木が折れるとちょっと悲しいのですけど・・・(悲しいってのはちょっとちがうかなでもそんなかんじ)
ハニフラさん、緊急充電とラジオの準備お願いしますよ。はらはらしちゃった(笑)

ハニフラ さんのコメント...

ベックマンさん、せっかく書いてくださったコメントが消えたですか。
時々あるみたいです・・・ごめんなさい!
めげずにもう一度書いてくださってありがとう。

湖の中の一軒家、まさにそうでした。
そう、不謹慎と言われるかも知れませんが美しかったです。実は私も「ここは湖水地方?」とか言ってました。
木が折れると悲しいです。誰も悪くないのですけど(涙)

はい、停電中に頂いたアドバイスを忘れず、準備を整えます><

jick-jick さんのコメント...

テレビでの情報で大丈夫かな?と二人で心配していました。

みんな無事でなによりです。

我が町も海抜ゼロ地区が多く
水門ができたおかげで水害はなくなりました

昔話で台風の後はウイスキー樽が沢山流されたらしいです

ハニフラ さんのコメント...

jick-jickさん、気にかけて頂きありがとうございます。
お陰様で、これといった被害は出ずにすみました。
水害は、完全に押さえ込むのでなく、水門などをうまく使って折り合いをつけていく、くらいのスタンスが大事なのでしょうね。

ウイスキー樽・・・地域性が出ていますね!
そのような被害が出なくなったのはなによりです^^