めえ太が家族に加わって、あらためてヤギについていろいろ知った。
本で得た知識の他に、一緒に暮らして初めて分かった事柄もたくさんあり、それが
ヤギが皆そうなのか、
ヤギによりけりなのか、
あるいはめえ太の個性なのか、
ヤギ初心者の私には分からないのだが。
とにかく独りでいることがイヤ。
もちろんマイペースに草をモリ食いしている時間もあるが、可能な限り誰かと共にいたがるのだ。
めえ太が来るまで、ヤギという生き物は周囲の存在には無関心で、無表情な横長の瞳でただただ草をはんでいるのだと思っていた。
懐くという話も聞いたが、人間で言えば”会釈する程度”の関係だろうと思ったし、それ以上の想像ができなかった。
したがって、当初は周囲の田んぼに脱走しないよう、ジャンプ力などを見きわめて柵を強化するつもりだったのだ。
ところが。
脱走どころか、一緒に敷地外に出ていても、こちらが帰りつつあるのに気づくと、大慌てで追いかけてくる。
姿が見えないときは名前をひと声呼ぶと、どんな遠くにいても必ずひと声返事をしてから、一目散に走って帰ってくる。

頂き物を食べるのも鶏たちと一緒

頬ばるねえ

人間がひとところに留まって何かしらの作業をしていると、必ずそばに来る。
服の裾をひっぱったり、頭を押しつけたりした挙げ句、寄り添うように前肢を折って座り込み、反芻タイムに入る。
そうすると、こちらはもうそこから離れられなくなる(心情的に)。
小指くらいの枝なら軽々と噛み折って食べるのに、ヒトの指を甘嚙みするときはとても上手に力加減をする。
部屋の灯りがついていると、雨の降る夜や、ひどく冷え込む夜でも、その部屋の中が見えるところにいつまでもいる。
だから、めえ太はいつも人気者だ。