続くときは続くものだ。
2月26日の夕方、仕事から帰ると、いつものようにめえ太と鶏たちが駆け寄ってきた。
その中にシロちゃんがいない。

少し遅れているのかと思ったが、2、3分経っても来ない。
今はイタチなど、鶏の天敵が繁殖期に入る頃で、一番危険だといちえんさんから忠告されているので、真っ青になって探し回った。
幸い、暗くなる前に、小川のほとりでうずくまっているのを見つけることができた。

調べると、左の翼の下にかなり深い傷が2ヶ所ある。

最初は、イタチにひと咬みされたのかと思った。
が、それにしては、他の鶏たちが平常心すぎる。
羽根の散った形跡もない。

昨年の今ごろ、『にげちゃん』という子が同じような傷を負っていたことがあった。
その傷が元というわけではないが、にげちゃんは看病の甲斐なく死んでしまった。
原因はさておき、シロちゃんは安定するまで部屋で養生することにした。
傷の深さにも関わらず、部屋に入れて水と餌を与えると、意外なほどに元気を取り戻した。
良かった、これなら良くなるだろうと胸を撫で下ろす。

落ち着いて傷をよく観察しているうち、オトウサマの蹴爪で傷ついたのではないかと思いついた。
おそらく、川べりの足場の悪いところでオトウサマが乗りかかり、バランスを崩し、蹴爪が引っかかったのではないだろうか。

オトウサマの蹴爪は長く鋭い。

これまで何度も、いちえんさんから「切った方がいい」と言われていた。
人間の安全のためである。
オトウサマは、雌鶏たちにはひたすらに優しいが、人間にはけっこう厳しく、ときどき蹴りを入れてくる。
「服なんかも裂けちゃうんで、切った方がいいっすよ」
といちえんさんに言われるまでもなく、その脅威は身をもって知っている。
それでも切らなかった。
2年前、切った直後にイタチに襲われ、短い蹴爪では一羽の雌鶏しか守れなかったからである。
四六時中見守ってはいられないし、敷地を自由に散策している以上、危険と隣り合わせなのはやむを得ないので、せめて、身を守る武器は持たせねばと思っていた。

が、雌鶏たちを守るためのその武器で、雌鶏を傷つけたとなると、オトウサマも不本意だろう(気づいていないだろうが)。
いちえんさんに訊いてみると、いちえんさんも、蹴爪によるものだろうとのお返事。
鶏たち自身のため、切ることを決意した。

翌日さっそく、昼休みに仕事を抜けて帰り、爪切り。
改めて見ると、傷がある左側の蹴爪は、右に比べても特に鋭く尖っていた。


前回の経験を踏まえ、あまり短くはせず、危険がない程度に先をまるめる。

屋内で養生中のシロちゃんはというと、元気に飛び跳ねすぎて、ダンボールごと部屋を動き回っていた。

試しに合流させてみると、ちゃんと群れと一緒に歩き回って、餌を食べている。

だが、オトウサマが乗ろうとすると、嫌がって逃げる。
やはり、犯人はオトウサマの蹴爪のようだ。

思ったよりも早く、シロちゃんを群れに戻すことができてホッとしたのもつかの間。
3月2日、夕方帰宅したときは皆と一緒にいたのに、薄暗くなって小屋に戻る頃になって、またいない。
再び、小川のほとりでうずくまっているのを見つけた。
抱きかかえると、震えている。
右の翼に触ったときに様子がおかしかったので調べると、今度は右側の同じ場所にケガをしていた。
それも、左よりも大きく、皮がべろりと剥けて、いわゆる”鶏肉”が丸見えの状態だ。
その代わり、左と違って血がまったく出ていない。
今度はすんなり推測できた。
今回も、川辺だったことと、左が痛くて支えられないこととで、またしても蹴爪が当たった。

尖っていないので、爪で裂けたと言うよりは、ひっかかってつるりと剥けた感じになったのだろう。たぶん。
なんということか、せっかく良くなってきたのに、反対側もとは。
だが幸いなことに、ときおり震えるが、変わらず食欲はあるし、室内に入れると元気はある。
翌日、3月3日は、一日室内で過ごさせた。

4日も、室内で養生させるつもりだったのだが、ダンボールの掃除をしている間に部屋から庭に出て行き、鶏小屋へ走っていく。
見に行くと、産卵箱の中で卵を産もうとしていた。


ダンボール暮らしも快適ではない。
庭でのびのびする方が、ストレスはないだろう。
気をつけて見守りつつ、そのまま仲間と合流させることにした。

その後も、群れから離れて、デッキの下などに隠れていることがあったり、ぶるぶる震えていることがあったりと、ちょくちょく心配したが、ゆっくりと安定する方向へ。
10日ほどかけて、ようやくほぼ元のペースに戻った。

変わったこととしては、夕方に川べりで動けなくなって独りうずくまっているところを助けた私の株が、シロちゃんの中で急上昇。

もともと人懐こかったし、どの鶏も私を見つけると全力疾走で集まってくるが、シロちゃんはそのまま、私の下にもぐり込むようになった。
長めの動画です。
特に盛り上がりもないので、お時間ある時に、のんびり鶏たちのくぐもり声を聴いてやってください。

傷の手当ては、犬やヤギのように流水では洗いづらいので、最初のうちはマキロンを、2~3日したら、我が家の昔からの定番アースリーフウォーターを吹きかけて洗う。
それから、軟膏で羽毛がべたつくといけないので、アースリーフジェルを塗り込む。

これらの処置を、シロちゃんは嫌がりもせず、素直に受けてくれた。
(もちろん最初は逃げようとしたが、悪いことではないとすぐ理解した)

鶏は、頭が良くない象徴のように言われることもあるが、彼らの本来の姿を知らないだけだと思う。


何も考えない、何も感じない、口から餌を食べて尻から卵を産むだけ、としか見ていないから、バタリー飼育もまかりとおる。

卵だって、雌鶏たちが命を削って生み続ける姿を見ていると、もっと高くてもいいくらいだと、密かに思っている。

追:
バタリー飼育とはこれです。

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